「雀蜂」を読んだ
冬に向かってスズメバチの凶暴さも断末魔に似たラストスパートがかかっており、あぁん?なに言ってんだよ?断末魔がラストスパートって?断末魔が陸上競技でもしとんのか!そしたら断末魔人か!などと他人の揚げ足を取ることに余念の無いネット右翼にも「うしろうしろ!スズメバチ!」といえばモニターから振り向きざま、瞬時に萎縮した陰茎より尿を漏出させさせ叫喚するほどなこの時期にピッタリの本が発売されてます。
貴志祐介さんのその名もズバリ「雀蜂」!
角川書店ISBN978-4-04-100536-1 520円(税別)
まずは表紙の雪の中を飛翔しているオオススメバチ(たぶん)というのを見た林業関係者ならばもう「んなアホな!」と即座に関西人化すること請け合いであり、事実私も帯の「あと一回刺されると─俺は死ぬ。」のアオリから、一般に流布する「ハチに2回刺されると死ぬ」という若干間違ったギミック一点で強引に突破した無茶な話に違いなく、むしろ逆にツッコミながら読めばさぞ楽しかろうという、ピュアな気持ちで購入しました。
ところが。
いいほうにネタバレさせていただきますが、表紙のような場面は一切無く、古書店において発見した懐かしAV女優が表紙にクレジットされてるSM写真集を雀躍後、定価の倍で購入したら彼女の姿は一切無く、九段下の駅に向かう坂道を僕はひとり涙を浮かべて黄昏時空は赤く焼け落ちて屋根の上に玉ねぎが光ってた…みたいな悲哀とむしろ逆で、なんか単に雪の山荘とスズメバチっていう出てくるものをただ並べただけみたいで安心しました。
っていうか、スズメバチの生態については、フィクションならば完全に許容範囲で、自分が同じ目に遭ったら!?とか考えるとドキドキすること間違いなく、つまり面白い!んですが、私はオチの意味が最初わからなくて2回読んでやっと理解したというありさまでした…。
しかし、この本で真に驚愕したのは最後の最後に「本書の執筆に際しては、独立行政法人 森林総合研究所(中略)牧野俊一先生にご協力を頂きました」としたためられてること!森林総合研究所といえばいわゆる天下り団体であり前々身が森林公団であり投下された血税がこのような良質のエンターテイメントとして国民に広く還元されたという事実なのでした!
とにかく、林業関係者も納得のサバイバルホラーっつうことで広くオススメできる一冊です。
でもカバーに「ラスト25ページのどんでん返しは、まさに予測不能!」とか書いてあるのはなんか余計な気がします。なんか野暮ですよね。前にも「想像ラジオ」を購入したら帯に「この本がいかに感動的で泣けるか」が耳なし芳一よろしくビッシリ書かれており興ざめしたものです。