山の中のペットボトル(完結編)
だからハチっすよ、ハチ!
くまのプーさんがハチミツをとろうとして逆にハチに追いかけられてるシーンを目にしたことはないでしょうか?アシナガバチの巣は、あの半球型のハチの巣とそっくりな形状をしています。アシナガバチとなると、ハチミツはないわけですから、プーさんは刺され損。巣穴が無いので半円状の切り口に(昆虫も眠るのかどうかは知りませんが)びっしりぶら下がって寝ています。そんないかにも安普請なアシナガバチの巣に対して、スズメバチの巣はいかにも「要塞」といった趣です。
って、オマエはファーブルか!ロン先生の虫眼鏡か!ハチの生態を詳しく記述してもしょうがないんです。問題なのは刺された時ですから(誰に言ってんだ?)。
ではいよいよ本題。
まずハチに刺されるというのはどんな感じなのでしょう?
アシナガバチに刺されると、字義通り「針」しかも熱した裁縫針を思いっ切り突き立てられたような痛みがあります。これがスズメバチになると、裁縫針が五寸釘にグレードアップすると思ってください。
もう冗談じゃないですよ、実際。
どんなにやる気満々で仕事をしていても、ハチに刺されると一気に母親の胎内に帰りたくなるほどテンションが下がります。巣に気づけば回避は可能ですが、だいたい刺されて初めて巣があることに気づくものです。特にアシナガバチは。
で、刺されたらどうすればいいのか?(ここからは、ハチに刺される危険性のある人以外は、非常に退屈な話なので、注意してください)
まず、アシナガバチに刺されたら?傷口をナイフで切り裂き急いで口で吸うのではなく、患部を冷やしたり吉草酸なんたらかんたらという物質を含有した軟膏を塗って様子を見ます。それで腫れや痛みが治まってしまう人もいれば、空気でも注入したかと思えるほど腫れる人もいます。そこは個人差。そしてもし20〜30分ぐらいでじんましんがでたら、それはアナフィラキシーというショック症状なので病院に行かなくてはなりません。アナフィラキシーとはアレルギーというか、花粉症の仲間というか、一回発症で一生発症(ラップ調)ですから、次回からは刺されたら必ず速やかに病院に行くハメになります。
んでスズメバチに刺されたら、私のところではとりあえず病院に行くことになってます。なぜなら、アシナガバチに比べて毒性がかなり高いから。でもよく言われるように2回目に刺されたら死ぬということはありません。もしそれが本当なら、林業に従事している人口が今の半分以下に減っているはずです。正確にというか体感的には、スズメバチに2回刺されるとアシナガバチよりはアナフィラキシーが出やすいような気がしないでもない。が、アナフィラキシーの程度が桁違い、というのが本当ではないでしょうか。
とにかく、スズメバチに刺されたら、初めてでも病院に行くのが無難なのです。
ハチに刺されて病院(というか診療所)に行った場合、まず受付でハチに刺された旨を伝えます。すると優先的に処置してもらえます。現場から汗でぐしょぐしょの患者がヨタヨタやってくると、順番待ちをしている老人も寛容な心で順番を譲ってくれます。
次に、一番大事なことを受付に伝えます。
「あ、△△林業の者なんですが、今回は(本当は今回も)保険証を使わないでやってください」
そう、別に無保険でもないのに保険証が使えないのです。
どういうことでしょう?
その理由は「労働災害」、いわゆる労災です。
労災を起こした場合、最悪、公共工事の指名停止処分などのキツイ状況になったり、最低でも事業所が払う保険料が上がったりします。何らかの監査のようなものが抜き打ち的に入ってしまって、就業時間内に保険証を使って外科的な処置をしてもらったのが発覚した場合、「労災隠し」と当局に見做されてしまうことがあるんだそうです。労災隠しは、当局(というか労働基準監督署)の心証を悪くし、ペナルティも上積みされてしまいます。
よって命に別状がないケガ(俗に赤チン労災といいます)は保険証を使わないで治療してもらうことがほとんどになります。治療費を全額事業所で立て替えても、最終的なコストが安く上がるというわけです。
それにしても保険証を使わないなんて、受付ですんなり受け入れられるんでしょうか?逃亡中の指名手配犯と思われないんでしょうか?
大丈夫です。
たいがいは事業所と昵懇にしている「指定医」のところに行きますから。
「はい、わかりましたぁ」
待合室に「労災隠しは犯罪です」なんてポスターが貼ってあっても、受付の(元)お姉さんはチーズバーガーでも頼まれたような笑顔(¥0)で了解してくれます。「はいはい、また来た」という感じで。実は前出の軟膏も普通の薬局では売ってないので、この指定医に処方箋をナントカしてもらって大量に購入したりします。
そして、点滴をして、アナフィラキシー対策の抗生物質(?)の錠剤を処方されて診察は終了です。今後、夏の間はその錠剤を常時携帯することになります。で、また刺されたらすぐさまそのクスリを服用して病院に足を運ぶことになります。
このように対処さえしっかりすれば、ハチに刺されて死ぬことは滅多にないはずです。
いかがだったでしょうか。
明日は映画で初デート。ロハスピープルの彼女にあわせて「みつばちハッチ」を鑑賞予定。そんな貴殿が映画を見た後、彼女に披露するにふさわしいウンチクだったと(独善的に)自負します。っつうか、今年初めて山で夏を迎える新人さん、安心しましたか?
« ワールドカップ開幕 | トップページ | 日本勝った! »
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- 8年(2019.03.11)
- 長靴の補修2019 マーチン博士にもヨロシク(2019.01.17)
- 2019年ですと?(2019.01.01)
- 2018年林業界10大ニュース(2018.12.31)
- 今年こそは観たんですよ!植樹祭!(2018.06.10)
コメント